前回は、ミドルエイジ・クライシス(MC)を、「この先をどう生きるか」を考え直す時期に差しかかったことを示す、人生の棚卸しサインとして捉え直しました。

では、その問いに向き合う時、私たちの人生では、何が変わっていくのでしょうか。
セミリタイアを考え始めると、多くの人が、知らず知らずのうちに価値基準を組み替えていきます。
今回は、「キャッシュ・リッチから、タイム・リッチへ」という視点を軸に、MC期に起こりやすい、人生の軸の変化について考えてみます。
キャッシュ・リッチから、タイム・リッチへ
中年期においても、資産の重要性は変わりません。
ただ、『Die with Zero』で指摘されているように、そこから引き出せる体験価値は、年齢とともに確実に低下していきます。
多くの人は、昇進や収入増と引き換えに自由な時間を失い、気づいた時には「お金はあるが、使う余力がない」状態になります💦
一方、セミリタイアを考え始めると、視点は、自然に「今」だけでなく、「この先20年、30年」へと広がっていきます。
- 残りの人生で、何に時間を使いたいのか。
- 自分にとっての豊かさとは何か。
- 死ぬ時、後悔しないために、今できることは何か。
こうして人生を長い時間軸で眺めると、価値基準は、以下のように、少しずつ変わっていきます。
- 「増やす」→「使う」
- 「競争」→「納得」
- 「社会の評価」→「自分の感覚」
もちろん、セミリタイア後も、働くこと自体は続きます(なにせ「セミ~」ですから)。
ただし、その理由は、「生活のため」から、「自分がそれをしたいから」へ変わります。
この変化は、仕事に限った話ではありません。
セミリタイア後は、日々の行動すべてに、この「自分がやりたいから」という基準が付いてくるようになります。
この基準の変化は、時間の使い方にも、はっきりと表れてきます。
やるべきことに時間を奪われる感覚から、自分で時間を配分している感覚へ
時間を「余らせる」のではなく、「主導権を取り戻す」
そうした積み重ねの先に、タイム・リッチという感覚が生まれてくるのだと思います。
キャッシュ・リッチから、タイム・リッチへ。
この価値基準の転換こそが、MCを抜けるために必要な「目線の高さ」を、自然に与えてくれるのではないでしょうか。

自己満足という“軸”を持つ
ここまで、MCを抜けるには、「自分軸で考える」という視点の転換が必要だと整理してきました。
そして、セミリタイアを考えることは、「自分に目を向ける行為」そのものであり、それゆえに、MCへの有効な対処法として機能する、と書きました。
まとめると、大切なのは、「自己満足」という軸を持つことだと言えそうです。
では、なぜ自己満足なのでしょうか。
「幸福」と「自己満足」の違い
「幸せ」や「精神的健康」など、人生の軸になり得る言葉はいくつもあります。
私自身、以前は「セミリタイアする目的は、人生の幸福度を上げることだ」と考えていました。
ただ、考え続けるうちに、「自己満足」という言葉の方が、しっくり来るようになりました。
というのも、「幸福」や「しあわせ」という言葉は、どこか漠然としていて、無意識のうちに「他人との比較」が混ざりやすいからです。
一方、「自己満足」であれば、そこに客観的な物差しは入りません。
個別的で主観的、そして、自己完結的な話にしやすい。
自分が納得していれば、それでいいし、それがすべてです。
この点が、とてもシンプルで良いと思いました。
そして、セミリタイア後は、「正解」や「評価」が急激に減っていく世界へと、足を踏み入れることになります。
他人や外部に正解を求めても、誰も答えは持っていません。
だからこそ、自分の中に基準がないと、迷子になってしまう可能性があります。
つまり、セミリタイア後の人生を安定して歩くには、「自己満足」という内側の基準を持ち、それに従って選択していくことが、不可欠になるのだと思います。
小括
セミリタイアを考え始めると、お金や働き方だけでなく、時間の意味や、人生の基準そのものが、少しずつ変わっていきます。
他人の評価や社会的な正解ではなく、自分の納得感を基準に選ぶ。
そのための軸として、「自己満足」という考え方は、とても相性がよいと感じています。
ただ、頭では分かっていても、長年染みついた外部基準を手放すのは、簡単ではありません。
では、どうやって、自分の軸を取り戻していけばよいのか。
次回はいよいよ最終回!
日々の選択の中で「自己満足」を育てていくための、具体的な視点について考えていきます。

