前回は、ミドルエイジ・クライシス(MC)を、失敗や不調ではなく、人生の棚卸しサインであり、「この先をどう生きるか」を考え直すための転換点と整理しました。

ただ、MCの最中にいるときは、自分が何に戸惑っているのかを、冷静に考える余裕がないことも多いと思います💦
漠然とした焦りや虚しさに包まれながらも、何をどう変えればよいのか分からない…
そんな状態に置かれやすい時期でもあります。
第2回となる本稿では、MCを一時的な不調としてやり過ごすのではなく、人生を組み替えるためのサインとして受け止め、どのように向き合うと良さそうか。
「セミリタイア」という考え方を軸に、もう少し具体的に整理していきます。
MCとセミリタイアは、同じ問いに向き合うもの
MCを人生の棚卸しサインとして受け止めるとき、自然と浮かび上がってくるのが、「この先の時間を、どのように使っていくのか」という問いです。
セミリタイアの本質もまた、働き方、余暇時間、お金の配分を見直しながら、生活の軸足を「自分自身」に戻していくところにあります。
その意味で、セミリタイアは、MCが突きつけてくる問いと、同じ地平に立つ考え方だと言えるのではないでしょうか。
MCは、身体的にも社会的にも、人生の棚卸しを意識せざるを得なくなる時期です。
このタイミングで将来の選択肢について考えることは、不安を減らし、先の見通しや安心感をもたらします。
そして、その際に検討するテーマ
――必要な資産、社会的な立ち位置、人生の意味といったものは、セミリタイアを考える過程で自然と向き合うことになる論点と重なります。
もちろん、「セミリタイア」が、すべての人にとって唯一の正解というわけではありません。
ただ、MCという「立ち止まらざるを得ない時期」において、一つの視点としてセミリタイア的な考え方を取り入れることには、大きな意味があると感じています。
なぜ、セミリタイアはMCに効くのか
ここでは、セミリタイアについて考えることが、ミドルエイジ・クライシス(MC)にどのような好影響をもたらすのか、整理してみます。
元気なうちに試行錯誤できる(予行演習・前倒し)
多くの人は、定年や病気、気力の低下などによって、選択肢が狭まってから、人生を考え直すことになります。
一方、セミリタイアは、まだ体力や判断力、環境の柔軟性が残っているうちに、働き方や暮らし方を試すことができます。
「絶対に外せない」と思って一発勝負に挑むより、「失敗しても大丈夫」「試すこと自体に意味がある」と捉えられれば、気持ちはかなり楽になります。
小さく始めて、合えば続け、違ったらやめる。
そうした試行錯誤を重ねられる余地が残っていること。
これこそが、セミリタイアを早めに考える最大の価値だと思います。
軌道修正が緩やかになる
定年で仕事を辞めると、多くの人が強い喪失感を覚えます。
肩書きや役割、収入、生活リズムといった「当たり前にあったもの」が、一気になくなるからです。
この急激な変化は、想像以上に心身へ負担をかけます💦
MC期は、老年期ほど大きな変化が起きるわけではありません。
しかし、「体力の衰えを感じる」「社会的なピークは過ぎたのではないか」といった、喪失を予感させるサインが現れ始める時期です。
この違和感を放置すると、不安や虚無感だけが膨らみ、実際に変化が訪れたとき、一気に精神的なバランスを崩してしまうことがあります。
退職後のさまざまなロスが示すように、人生における急ハンドルは負荷が大きい。
だからこそ、MCの気配を感じる頃から、少しずつ舵を切っていくことが大切なのだと思います。
セミリタイアを考えることは、将来の変化に備えて、仕事・収入・時間の使い方を段階的に見直していく行為です。
一気に喪失を経験するのではなく、前倒しで、小分けにして、慣れていく。
こうして「緩やかなスロープ」を用意できることが、MC期の不安を和らげる大きな助けになるのではないでしょうか。

小括
ここまで、ミドルエイジ・クライシス(MC)と、セミリタイアという考え方が、実は同じ問いから始まっていることを整理してきました。
MCは、「うまくいっていない」というサインではありません。
むしろ、「この先をどう生きるか」を考え直すタイミングが来た、という合図なのだと思います。
そして、セミリタイアは、その問いに向き合うための、一つの視点にすぎません。
ですが、「元気なうちに試し、緩やかに舵を切る」という意味で、MC期と相性のよい考え方であることは確かです。
次回は、セミリタイアを考えることで、人生の何が変わっていくのか。
特に、「お金」と「時間」という価値基準の変化に注目して、もう少し掘り下げてみたいと思います。

